月夜の訪問者
「随分深刻そんな顔だな
そんな顔初めて見た
嫁さんそんなに悪いのかい?」

先生は『珍しい物を見た』とでも言いたげに、雅を見詰める

「俺の事はどうでも良いから、早く友理を診察しろ!」

キッと、先生を睨む雅
どうやら先生とは、けっこう親しい様だ。

「相変わらずだねえ、君は
さて、私はこの家の担当医でね。
柳だ。宜しくね。」

雅から私に目線を変え、挨拶してくる先生

「あっはい…友理です」

私も一応挨拶する。

担当医って、もっとオジさんかと思ってたのに、拍子抜けしてしまう。
何せ目の前の男は、二十代後半ぐらいの若い先生

しかも

日本人場馴れした堀の深い顔
栗色の、やや男にしては長い髪
細く垂れた目の下には泣き黒子
そしてセクシーな口元

素敵過ぎる。

完璧な容姿の人って存在するのね
まるで、芸術作品を見てる様

うっかり見とれてしまう。

「君、雅を落としたなんて、社交界じゃ有名人だよ。
まぁ、確かに可愛らしい猫目に桜色の唇、薄く頬を染めてる姿は魅力を感じるね」

と、サラサラ言いつつ額に手を置かれる。
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