月夜の訪問者
しかし、いつまで経ってもその感触が訪れる事はなくて
「っ冗談だ」
雅のセリフに目を開ける。
もう雅の顔は、私から離れていた。
「ちょっと!女性をからかうなんて」
やっぱりデリカシーの欠片もないやつ!
柳先生の爪のアカでも煎じて飲ませれば良んだいわ
「やっぱり、和泉と交代する」
雅は、そう言うなり、部屋を出ようと向きを変える。
「あっ」
慌てて引き留める私
「駄目よ!
和泉だって、今日の仕事が有るんだから
私は、大丈夫だから
ちょと夢見が悪いだけで、大袈裟よ」
時間的にも非常識だ
「夢?そうだ夢!
どんな夢だった!?」
雅は、おもむろに両手で私の肩を、ガシと掴む。
「えっ夢?
大した事ない夢わよ!?」
苦笑する。
だって子どもが怖がる様な、奇想天外な夢だったし
「いいから!」
それでも、真剣に内容を知りたがる雅
聞かせないなら、梃子でも動かない!とでも、言いそうな勢いである。
「うっ…
笑わないでよね」
勢いに負けてしまい、夢の内容を話す。