夕闇、君にビーチグラス。
届かないと、彼女が言った。
いや、星を掴むなんて現実にはあり得なくて無理だと先に言ったのは僕だけれど。
理由もなく、彼女が諦めるなんてそんなはずないと思った。
「わたしの腕の長さじゃ」
「……」
彼女は何を言った?
「ねえ」
「ーー」
「あなたなら」
ベージュのグロスが闇の中で煌めく。
「あなたなら届くかしら?」
……届くわけない。
なぜか彼女なら届く…、いや届かせる気がしたけれど。
僕は彼女よりも幾分背が高いけれど。
それでも届くわけない。それはどう考えても覆らない事実だ。
だけど
あまりにも彼女が期待した瞳を向けるから。
退屈そうな声はどこかに消えてしまったから。
「……もしかすると」
「まあ」
その期待に応えたくなったのだ。