夕闇、君にビーチグラス。
彼女がしたように、手を空へ伸ばした。
「どうかしら」
「……大丈夫。届きましたよ」
「あら、ほんとう?」
彼女の声は、まるで歌うように軽やかで。
「ほら」
そんな彼女に向けて開いた右手には、オレンジ色の星屑が乗っていた。
「これ……」
「どうぞ」
白く、細い指がそれをそっと摘んだ。僅かに触れた指先は冷たく僕の熱を奪う。
「きれいね」
光に照らされてキラキラと反射するそれはビーチグラス。
波に洗われ角が削れたガラスの星屑。落ちてしまった砂浜の星屑。
必要とされなくなった欠片にしては、あまりに綺麗で。
空から砂浜、砂浜から僕のポケット、そして彼女の手の中へ。
小さな硝子は星となる。