初恋泥棒!
「しぃちゃん、あきら、ごめんなさい…」
今年も海に行けそうにありません…。
とぼとぼ 下を向いて廊下を歩いていると
「無理だって。」
「何がだよー!普通にいけんじゃん!」
千疾くんと清水くんの声。
ひと気のない昼休みの図書室で、二人がいるのが見えた。
「純粋同士、いいと思うけどなぁ!俺は」
「だから!…あいつは可愛過ぎる。あいつのそばにいたら俺、純粋じゃなくなる」
この私でも分かってしまった。
…好きな女の子の話だ。
図書室の中からは見えない場所で、息を殺して座っている自分を
マジでストーカーなんじゃないかと、少し心配になる。
「いや、お前も十分純粋だけどなぁ」
「…うっせ。経験豊富なお前とは違うんだよ、バーカ」
「黙れ。それよりさ、もうそろそろ告らねぇとマジでとられんぞ」
清水くんが真剣な声で言うと
「言われなくても、そろそろ…決着つける、予定だ」
図書室に、千疾くんの落ち着いた言葉が響いた。