空から君へ

絢も本当に暇人。

見舞いなんて毎日来なくたっていいのに。
なんて、内心すごく嬉しかった。





楽しみなのは特に土日だった。
絢のお母さんが、土曜や日曜日に夜勤を入れていたから、

絢は毎週病院に止まっていた。


幸せの空間。
でも…


手が届く距離なのにその距離でさえ、遠い。

読書なんて、後からにしろよ。



ベッドについている机に、
突っ伏すような体勢になり、髪をクシャッと握る。






「距離が遠いだろ……」






スキが大きくなるほど、その距離がもどかしくて仕方ない。

弱った俺の声。
ダメだな俺…。絢なしじゃ生きていけないかもしれねぇ。






「えっ?」






驚くよな。
いきなり何言ってんだよ。でもさ

それくらい好きなんだ。






「そばにいろ」





その日は、病院のベッドで一緒に寝た。
狭いけど、温かい。

腕枕すると、新鮮な感じがした。






「絢、お前の描く未来に俺はいる?」



「陽のいない未来なんて想像もできない」



「お前と出会って、運命さえ変わった気がする」






生きなきゃいけない。

絢の思い描いている未来に、
俺がいるのなら。

隣で笑っているのなら……


絶対にあきらめられない。



諦めたら、俺は最後まで最低な奴になる。




だから

絶対



諦めない。





< 53 / 75 >

この作品をシェア

pagetop