たったひとつの愛と笑顔
なんでだろう。この頃、直木先輩は、なぜか明日香に慣れ慣れしい。


もしかしたら、明日香の事・・・。
そう一瞬思ったが、「いや、そんなことはない」と、自分に言い聞かせると、教室へ入った。


「おはよう。」


亜里沙があいさつをする。


それをそのままそっくり返す。


「明日香、さっきの人、明日香の彼氏??ってか3年生だよね。すごいじゃん。」



明日香はめんどくさくなった。


「んー。そんなもんかなぁ。」


と、適当に答えた。


しかし、それが適当だと思っていない亜里沙は、みんなに言いふらす。


「明日香って3年生に彼氏がいるんだって。」


すると、みんなが集まってくる。


「すごい。明日香。可愛いし、頭良いし、勉強できるし、モテモテだし。」


と、みんなが騒ぎ立てる。


「あのさぁ、亜里沙、ゴメン。今の話、嘘だから。」



そういってこの場を走り去った。



C組の教室に入ると、ゆうを呼んだ。


「あのさぁ、明日香と直木先輩が付き合ってるって噂がたっているみたいだから、そこ、誰かにいわれたら、訂正しててね。」


ゆうの答えを無視して、もうすぐ予鈴のなる教室へ飛び込むように入った。



予鈴が鳴ると、朝の会が始まる。



朝の会が終わったあと、一時間目の国語に備えて教科書を出す。


「明日香チャン。」

この声は・・・。


と、思って振り向くと、やはり直木先輩だった。


「どうしたんですか?直木先輩。」


と、聞くと。


「直木先輩っておかしくねぇ?翔太でいいよ。」


い・・いきなり?


と、思いながらも呼んでみる明日香。


「翔太?」


少し恥ずかしくなったが、やっぱり何か自然な感じがする。



この呼び捨てが、恋の嵐のはじまりだった。

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