たったひとつの愛と笑顔
「健二がいじめたからでしょ?頭いいからって、運動神経がいいからって。ちょっと人よりかっこいいからって、そんなことしていいわけないじゃな・・い・・。」

最後らへんは、涙声でいったので聞き取りずらかったと思う。


健二は何もいわず、私を抱きしめた。


「でも、許せねぇんだよ。だいたい、あいつがお前のことを嫌いって言ったから。」


もう・・何も聞こえなかった。


健二の言ってることが、よくわからなかった。


「どういうこと??」


健二から事情を詳しく聞いた。


その内容は、こうだった。


「俺、ユキアに聞いたんだ。
「明日香のこと、どう思う?」って。

そしたら、あいつ。

「嫌い。あいつのことが憎い。」って言ったんだ。」


私・・・嫌われてたんだ。


「ユキア、なんで?私のどこが嫌い??」


明日香は気づけば、聞いていた。


「お前がいなければ、玉木は変わってなかった。」


健二は変わってなかった??


「健二が・・・変わったってこと??」


ユキアは返事の変わりに首を立てに振った。


「健二は、お前が現れなかったら、俺にもっと話しかけてくれた。小学校のときなんて、俺と1番仲がよかった。それに、お前と一緒にいるようになってから、俺と帰ろうとしなくなった。だから、お前なんかいないほうがいい。」


そうだったんだ。


私以外に健二を求めていた人がいたなんて。


気づかなかった。


「ごめん。」


それしかいえない。


「悪かった。本当は全部、俺のせいなんだな。」


こうして、この事件は終わり、ユキアも授業にたびたびくるようになった。

「これからは、健二と帰らないようにするから。だから、ユキアは健二と帰って。」


別に譲るつもりはなかったのだが、明日香は親切心で言った。


「別に・・どっちでもいいけど。」


と、ユキアは曖昧な返事を明日香にぶつけると、どこかに去っていった。
 





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