スキミー・ストイック【短編】
まぁそんな文句も会長の前じゃ棒切れ以下の攻撃力しかない、ただの独り言に過ぎないんだけど。
なんて苦笑しながらコーヒーメーカーにフィルターや粉末をセットして、こぽこぽと沸き立ったお湯を注ぎ込む。
スイッチのオンオフを切り換えるカチッという音がやけに響いて聞こえた。
…静かだなぁ。
そろりと机の方を覗き見ると、疲れを滲ませない真剣な表情で何十枚とある報告書に目を通す会長の姿があった。
目に掛かるくらい長めの前髪がペンを動かすたびにさらりと揺れる。
さっきから一切姿勢は変わらないまま、ペースを落とすことなく黙々と仕事をこなしていた。
「(やっぱ会長はすごいなー…)」
普段はおくびにも出さないけど、一応会長のことは尊敬している。
…まぁ、かなり人使い荒いし横暴だし我儘だしふざけんなこの野郎とか思う瞬間もたびたびってか頻繁にあるんだけどね。