スキミー・ストイック【短編】

 会長は普段からあまり甘いものは好んで食べないけど、仕事の合間に飲むコーヒーだけはいつも砂糖を多めに入れる。

 それは生徒会メンバーの中でも、いつもお茶汲み係としてこき使われているわたししか知らないことだ。

 …優越感、なんて特にないんだけど、でも、……ほんのちょっと嬉しかったり。

 自分の分のコーヒーも注ぎ終わったところで、熱々のマグカップを手馴れた動きで会長の元まで運んだ。

 さっきの会話が脳裏を過ぎって微妙な気持ちになりつつ、あくまでも平常心を装ってみたり。

 あんなのどうせ、会長の冗談に過ぎないってわかってるのになー…。

 それでもこうやって振り回されている時点でわたしの負けなんだって、どこかで思っている自分がいた。

 どうぞ、と小さく添えてマグカップを机に置けば、会長は書類から目を離しわたしを正面から見据えて一言。


「ん、サンキュ」
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