この手、あの手。
「俺の周りで騒ぐんじゃねーよブスが! お前らみんな失せろ!」
教室はしーんとしている。
悪い空気が漂った。
最悪な入学式だ。
群がっていた女子はみんな自分の席に着き始めた。
ひそひそ話を言う者もいた。
でも静かな教室だから聞こえる。
「顔だけじゃん」
「最低」
「お前だって性格ブスじゃん」
悪口だった。
でも本当のことだ。
私だって嫌味を言われたから、群がってた女子の気持ちが少しは分かる。
「座れば?」
「へ……!?」
急に顔だけ男が話しかけてきて、声にならないくらいの言葉が出た。
「座れよ。女子いなくなっただろ」
「あ……うん……」
もしかして、私の為に女子を追っ払ってくれた?
――まさかね!
顔だけ男だもん!