この手、あの手。
 

そして入学式が始まった。

吹奏楽部の華麗な演奏、校長先生の長い挨拶、知ってる名前がないか、ついつい聞いてしまう長い新入生呼称。

そして、新入生代表挨拶。


うっそ……!


今目の前で、顔だけ男が挨拶をしている。


こういうのって、成績トップの人がするんだよね?

頭良いんだ……。


そんな私の思いをよそに、他のクラスの女子がざわついていた。

かっこいいと思ったんだろう。

しかし、式前にあった教室での出来事で一気に冷めた私達2組は、みんな静かだった。

みんな何も知らずに騒いじゃって、可哀想に。


「最後になりますが、私は群がる女子が大嫌いです。その顔を一度鏡で見たらどうですか。不細工ですよ。俺はお前らなんか興味ない」


ちょっと何言ってんの!?


数名の先生が顔だけ男をステージから降ろした。

さっきまでざわついていた女子は、俯いたり顔を赤くしたり、泣いている者もいた。


入学式は大惨事となった。

そしてのちに、顔だけ男、鶴賀武志(つるがたけし)は聖難高校で性悪男と有名になるのであった。



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