この手、あの手。


「中学時代、私をいじめてたあの5人組だよ」

「えっ!? 会ったのか!?」

「うん」

それを聞いた聖治の顔つきが変わった。

怒ってる……。


「大丈夫だから! だから試合に集中して? 私のことは気にしなくて良いから」

「実乃梨……」

聖治は悲しそうな目で見つめてきた。


私を守れなかったのが悔しいんだ。

いつもいつも守ってくれてたのは聖治だったから。


でも、これからはもうあまり頼っちゃいけない。

そう思った。

だから、もしまたいじめられるようなことがあっても負けちゃダメだ。

強くならなきゃ。

強く、なりたい。

武志に頼るのも嫌だ。


言葉では言えない気持ちを、私は顔で伝えた。


「実乃梨、強くなったな」

なにも口にはしないけど、それを分かってくれるのが聖治。

私、これからもっと強くなるよ。


< 156 / 316 >

この作品をシェア

pagetop