この手、あの手。
その後顔だけ男は、教室を出ていった。
顔だけ男……、本当に顔だけ男?
なんで優しくするの?
女子には興味なかったんじゃないの?
そんなことされたら、ドキドキするじゃん。
「つーちゃん良いなあ、鶴賀君と話せて。あたしなんて無視されるし」
「そ、そんなことないよ」
あ……。
「……鶴賀君とは普通に話せて、あたしとは話せないんだね」
田畑さんと話すと私の声は、また小さくなった。
「鶴賀君だけってことは、そういうことだよね」
田畑さんは席を立って、他の人の所へ行った。
違う、違うよ。
好きじゃない。
やめてよ。
私は聖治の方を見た。
聖治は私の方をじっと見ていた。
無表情で。
きっと、嫉妬してるんだろう。
私は聖治に優しく微笑んだ。
すると聖治は微笑み返してくれた。