この手、あの手。
「麗南をジロジロ見んな。俺の幼馴染みだ」
顔だけ男の一言で、みんな黒板の方を向いた。
“麗南”――。
私の胸がチクッと痛んだ。
「小松麗南(こまつれいな)です。昔から体が弱くて、幼馴染みの武ちゃんにお世話になりっぱなしです。みなさんにも迷惑をかけるかもしれませんが、宜しくお願いします」
小松さんは笑顔で自己紹介した。
数名の男子の頬が赤くなるのが分かる。
惚れたな。
顔だけ男といい小松さんといい、幼馴染み同士でモテちゃって……。
大変だなあ。
こういうの漫画だったら、みんなから冷やかされるよね。
顔だけ男の反応が楽しみだ。
小松さんはきっと顔だけ男が好きだ。
教室に入ってきた時、顔だけ男と楽しそうにしてた。
席に着く時も、顔だけ男を愛しい目で見てた。
あれ……?
やっぱり私の胸がおかしい、痛む。
なにこれ……、これじゃまるで、私が顔だけ男に惚れたみたいじゃん。
そんなことないのに……。