この手、あの手。


うぅ……。


私は紙をギュッと握った。

中には“好きだよ”と書かれていた。


武志のバカ、どれだけ私を喜ばせたら気が済むんだ。


嬉しくて顔がニヤけた。


「返事ちょーだい」

隣からボソッと聞こえた。

私は既に書かれている文字の下に、小さく“私も好き”と書いた。

それをまた綺麗にたたんで、武志の机に向けて投げた。


こういうの良いなぁ、青春だ。

前は前後の席だったから、武志にはよく背中に文字を書かれてたけど……。

背中よりは見える文字の方が嬉しい。

良いな、この席。


幸せ。


「ぷっ」

人が幸せ気分を味わっていたのに、武志は笑っていた。


「文字ちっさ」

「うっさい。いらないなら返して」

「やだ」

やだって……、子供か!


でも、喜んでくれてるみたいだから良いや。


この後私と武志は担任に見つかり、みんなの前で怒られてしまった。


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