この手、あの手。


自宅謹慎になってから2日目――。

小松さんが目を覚ましたと知り、私は両親と一緒にお見舞いに行くことになった。


「ほら、早く来なさい!」

お母さんは私を無理矢理引っ張る。


はぁ、うざい。

なにも知らないくせに。


コンッコンッ。

お母さんは304と書かれた病室の戸をノックした。

中から聞き覚えのある声が「どうぞ」、と言った。


「失礼します」

両親は手に持っている果物を、小松さんのお母さんであろう人に渡していた。


「この度はうちの子が、大変ご迷惑をおかけしました」

両親は深々と頭を下げた。


「実乃梨、何してんの! 貴方もよ!」

私は無理矢理お母さんに頭を押し付けられた。


痛いよお母さん。


「ほら、何か言う事あるでしょ!」

何それ……、なんもないし。


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