この手、あの手。
自宅謹慎4日目――。
まだ両親が眠っている朝6時頃、私はなるべく音を立てないよう家を出た。
「親戚に預けられるなんてごめんだし」
着替えや財布が入ったリュックを背負い、私は適当に歩く事にした。
「実乃梨?」
体がビクッとなった。
「聖治……」
2階の窓から聖治が顔を覗かせていた。
「何処行くの?」
「聖治には関係ないじゃん」
私は再び歩き出した。
「待てよ!」
もう、大声出さないでよ。
両親や近所の人に見つかっちゃうじゃん。
「いなくならないよな?」
「………聖治」
私は少し間を開け、聖治の方を向いて言った。
「私はどんな理由があろうと、絶対小松さんを突き落としたりしないよ」
私は走ってその場を後にした。