この手、あの手。


最低……なのは私もだ。

簡単に騙されて、私もバカだなあ。


「田畑さんと仲良くするんじゃなかった」

自分のあまりのバカさにおかしくなり、私は1人笑った。

周りの目など気にせず……。

その時、涙も一緒に出ていた。


「こんな顔じゃ、聖治に泣いてるのバレちゃうな……」

私は傘を閉じ、濡れながら足を進める。

ハイヒールのコツコツした音が地味に聞こえる。


雨に濡れるとまだ肌寒い。

でも、心も涙も一緒に流したい。

これで良いんだ。


「何してんの?」

目の前に顔だけ男が現れた。


「……俺ん家この近くだから寄れば? そんな格好じゃ、田畑達に何されたか悠木にバレるぞ。良いのか?」

「い……の」

ひっく、ひっくと泣きながら言った。

なんかもう、どうでも良い。


「はあ……、来いよ」

顔だけ男は私の手を引っ張っていく。


「……たい……。足痛いから走らないで」

私は顔だけ男の手を払った。



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