この手、あの手。
「ったく、面倒くさい奴だな」
そう言って、顔だけ男は傘を閉じて私をおんぶした。
「ちょ! やだ!」
なにこれ、超恥ずかしい!
周りの通行人が、ちらほら私達を見てくる。
「仕方ねえだろ」
「つ、鶴賀君も濡れる!」
「もう濡れてるから」
大雨の中、顔だけ男は重いであろう私をおんぶして帰った。
その間私は、顔だけ男の優しさにホッとして、悔しさや悲しさでずっと泣き続けた。
「着いたぞ」
顔だけ男の背中から降ろされ、私はハイヒールを脱いだ。
「麗南ー、いるかー?」
麗南って……小松さん?
まさか同居!?
「お前勘違いしてるだろうけど、麗南は両親が仕事で忙しいから毎日俺ん家でご飯食べてるだけだから」
「あ……はは……」
私の考えはバレてた。
「武ちゃんおかえり……って、え……? 都村さん?」
「こんばんは……」
小松さんはかなり驚いた顔をしている。