この手、あの手。


「麗南、悪いけど風呂場からタオル2枚取ってきて」

「分かった!」

小松さんはスリッパのパタパタという音をたてながら、奥へ行った。


ご飯食べてるだけっていう割には、風呂場を知ってるんだね……。


小松さんが戻ってきて、顔だけ男はタオルを私に被せた。

そして、私の頭をクシャクシとしてきた。


「ちょっと! これくらい1人で出来る!」

「人が親切に拭いてやってんのに文句言うな」

顔だけ男はもっと荒く、私を拭いてきた。

そのせいで私の髪はボサボサになる。


「俺の服貸すから、風呂場に行って服脱げ」

「別にいい、このまま帰るから」

すると、顔だけ男は溜め息をついて私に顔を近づけ、背中を触ってきた。


「透けてるんですけど。襲われたいの?」

顔だけ男は耳元で、ボソッと呟いた。


「ば、バカ! 変態!」

私は顔だけ男を突き飛ばした。



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