この手、あの手。


始めは嫌そうな顔をしたが、私を見つけると無表情でこっちに来た。


「何?」

相変わらず他人には冷たい声だ。


「今週の土曜、カラオケ行かない? つーちゃんもいるんだけど」

武志は物凄い険しい顔になった。


うわっ、めっちゃ嫌そうな顔してる……。


「何の為に? またつーちゃんに何かすんの?」

めっちゃ怒ってる。


みんなも武志の声に驚き、静かになった。


「何もしないよ。今度はちゃんと、友達として遊びたいんだ。それを信じてもらいたくて鶴賀君を誘ってるんだけど」

少し間が空いたけど、武志は頷き、「分かった、良いよ」と答えた。


「つーちゃん」

「何?」

「楽しもうな」

優しく微笑む武志に胸が高鳴る。


「うん……」


武志が恋しい。



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