この手、あの手。


カラオケボックスに着き、田畑さんから歌い始めた。

某アイドルグループの曲を歌っているが、田畑さんにピッタリな明るい曲だ。


「つーちゃんそれ普通のカルピス?」

「え? うん?」

隣に座っている武志は、私の飲み物を指差して言った。


「ちょっとちょーだい」

「えっ」

私の了解も得ずに、武志は私のカルピスを飲んだ。


うっ……、間接キスだ……。


「あ、ごめん。つーちゃんも俺の欲しかった?」

「いいい、いい! いらない!」

思わず噛んでしまった。

そんな私を見て笑う武志の笑顔が眩しかった。


なんだか懐かしい感じ……。


「こらそこー、イチャつかない!」

田畑さんに指を差され、私は武志から少し離れた。



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