この手、あの手。


「だからもう、私に優しくしないで。私に触れないで。私が触れて欲しいのは聖治じゃなくて、武志なの」


なんでこんな言葉しか言えないんだろう。

もっと、聖治が傷つかない方法もあるだろうに。

こんな自分が許せない。

ごめんね聖治。


「もう、聖治の手は取らない」

凄く泣きたい気分になった。

でも泣きたいのは、私よりも聖治のはずだ。


「分かった……分かったから。ごめん」

聖治は何度も「ごめん」と言ってきた。


「謝らないで。悪いのは私だから」

聖治はなかなか顔を上げてくれない。


「実乃梨、最後で良いから、俺の話聞いてちゃんと答えて」

そう言って、聖治は顔を上げた。

目が赤い。



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