この手、あの手。
桜が散り始めた頃に、入学式がやってきた。
「ああもう、これじゃあ綺麗な桜並木じゃなくなるじゃん」
今日から私達が通う聖難(せいなん)高校は、桜並木の先にある。
「そう残念がるなよ。今日から華の女子高生じゃん。な!」
私は隣を歩くアイツに、背中を思いきり叩かれた。
私、都村実乃梨(つむらみのり)は今日から高校生。
家が隣で幼馴染みのアイツ、悠木聖治(ゆうきせいじ)と通学中だ。
幼・小・中・高と同じ学校なのだ。
幼馴染みというよりは、お兄ちゃん的存在みたいになっている。
「桜ついてるぞ」
聖治は私の頭に乗っていた桜の花びらを、自分の手の平に乗せた。
ほら、そういう優しい所がお兄ちゃんみたいなんだよ。
聖治は無意識にやってるみたいだけど、急に触れられるとドキドキする。