この手、あの手。
「へ、変態変態変態!」
私は顔だけ男の頬を叩いた。
その瞬間パシッと、小さな音がした。
「ってーな。さっさと脱がない奴が悪いじゃん」
「脱ぐから出てってよ!」
「へーへー」
顔だけ男は大人しく風呂場から消えた。
全く、顔だけ男がまさかこんな性格だなんて知ったらみんな引くだろう。
少なくとも私は違うけど……。
だって私……。
「都村さん、脱いだ?」
「あ、うん」
小松さんが籠を渡してきたからそれに下着を入れた。
「下着は私が乾かすから安心してね。これ、武ちゃんの服。乾くまで着てて」
「有難う……」
小松さんはしっかりしてるなあ。
「あの……さ、もしかして都村さんは武ちゃんを好きなのかな?」
戸を閉めようとし、途中で止めた小松さん。
なにを言い出すかと思えば……。
「まさか! 誰があんな男!」
「そう……、それなら良いんだけど……」
小松さんはまだ何か言いたそうに、そわそわしていた。