この手、あの手。


「失礼します……」

「どうぞ」

おばさんはにこにこしながらソファへ誘導してくれた。


優しい人で良かった……。


「武志、あんな性格でごめんなさいね」

クッキーを出され、私は頭をペコッとして一口食べた。


「鶴賀君には入学式の時から助けてもらって……、感謝してます」

なんて、嘘だけど。

感謝なんてしてないし。


「ふふっ。都村さんのことだから、武ちゃんに感謝してないでしょ」

どうやら小松さんにはバレバレのようだ。

さっき会話して、私の性格バレたもんな……。


「まあ実乃梨ちゃん、事実だけ言って良いのよ。武志は今までずっと、敵ばかり作ってたから」

「す、すみません」

「友達いないから、実乃梨ちゃんが家に来てくれた時は本当に嬉しかったわ。初めて麗南ちゃん以外の子を連れてきたんだもの」


え……?

友達いないの?

今まで一度も……?


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