この手、あの手。


「なに俺の話してんの」

リビングに顔だけ男が入ってきた。


「ほら服、乾いたぞ」

私の服が投げられた。


「武ちゃん投げちゃダメでしょ」

「煩い。そういう麗南も乾かしたのかよ」

「ちゃんと乾かしたよ、ほら」

小松さんは顔だけ男に私の下着を見せた。


「ちょっ、小松さん! それ私の下着!」

「あっ!」

小松さんは慌てて下着を後ろに隠した。

でも遅かった。


「ふーん、ピンクのフリフリにヒモパンか。下着だけは色気あるんだな」

「下着だけとはなによ!」

私は乾かしてもらった服を顔だけ男に向けて投げた。

それは見事に的中し、顔だけ男の顔に服が被さった。


「てめえ……」

服で顔は見えなかったが、声で怒っているのが伝わる。


「もう服返さねえからな。その格好で帰れば? 胸思いっきり透かせた格好で」

その言葉で私は急いで体を縮めた。

そういえば、下着してなかったんだ……!


< 36 / 316 >

この作品をシェア

pagetop