この手、あの手。


「服返して」

「返してほしけりゃここまで取りに来いよ」


この野郎……、どんだけSなんだよ!

Sを通り越してドSだ、ドS!


私は左手で胸を隠しながら顔だけ男に近づいた。

そして右手で自分の服を取り返す。


「もう! 返し……わっ!?」

右手を掴まれ、顔だけ男に引っ張られた。


「元気出たか?」

「えっ……?」

「麗南や母さんと話してると、嫌なことぶっ飛んだだろ」

「……うん」

小松さんとおばさんに聞こえないくらいの声で、私達は会話した。


「じゃ、着替えたらさっさと帰れ」

服を渡すと、顔だけ男はリビングから出ていった。


「なに話してたの?」

小松さんからそっこう質問された。


「小松さんと仲良くしてって」

「そっか。でも、私達もう仲良しだよ」

「うん!」


嘘ついた……。

ごめんね、小松さん。


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