この手、あの手。
「その桜ちょうだい」
「は? なんで?」
「……聖治には関係ない」
私は聖治の手から桜の花びらを奪い、それをティッシュで包んだ。
「分かった! 押し花にすんだろ! 実乃梨は可愛いもんとか綺麗なもん、好きだもんな」
私は聖治を無視して桜並木を歩き出した。
「無視すんなよー。ずっと一緒だったから、実乃梨のことなんでも分かってんだからな」
聖治は私の頭をなでなでしてきた。
照れながらも、頬を膨らます私。
なんかむかつく。
私だって聖治のこと、いっぱい知ってるもん。
聖治はきっと、私のことが恋愛対象として好き。
でも私は聖治のこと幼馴染みとして好きだって気づいてるから、告白してこない。
その方が良いけど……。
だって気まずくなるなんて嫌だから。