この手、あの手。


「その桜ちょうだい」

「は? なんで?」

「……聖治には関係ない」

私は聖治の手から桜の花びらを奪い、それをティッシュで包んだ。


「分かった! 押し花にすんだろ! 実乃梨は可愛いもんとか綺麗なもん、好きだもんな」

私は聖治を無視して桜並木を歩き出した。


「無視すんなよー。ずっと一緒だったから、実乃梨のことなんでも分かってんだからな」

聖治は私の頭をなでなでしてきた。

照れながらも、頬を膨らます私。

なんかむかつく。

私だって聖治のこと、いっぱい知ってるもん。


聖治はきっと、私のことが恋愛対象として好き。

でも私は聖治のこと幼馴染みとして好きだって気づいてるから、告白してこない。

その方が良いけど……。

だって気まずくなるなんて嫌だから。


< 4 / 316 >

この作品をシェア

pagetop