この手、あの手。


「イチャつくなよな」

聖治が2人から目を逸らしながらブツブツ言う。


「じゃあ悠木だってイチャつけば良いだろ、つーちゃんと」

鶴賀君の言葉で聖治は私の方をチラッと見てきて、目が合う。


「俺だって実乃梨が好きだし」

「うざ」

私は無表情で聖治にそう言い、弁当に再び手をつける。


「ひっでえ……」

「都村さん、悠木君が可哀想だよ」

小松さんと鶴賀君は聖治に同情した。


「慣れてるから平気だよ。冷たく言うところもまた、実乃梨の魅力だから」

聖治は明るく振る舞っていた。


よくもまあそんな恥ずかしいこと言えるね。

こっちは恥ずかしさのあまり、冷たい態度取ってるっていうのに。

聖治はそれを分かってるんだろうか。


……バカだから、分かってないだろうな。


「ふふっ」

私は1人、クスクス笑った。


「怖い……」

3人から不気味がられたが、私は暫く笑った。


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