この手、あの手。
サワッ。
私の耳に手が触れた。
「聖治……」
「これで聞こえない!」
聖治は、あの甲高い声が私に聞こえないように耳を塞いでくれた。
「聞こえるし」
「じゃあもっとギュッてする!」
聖治は本当にギュッと私の耳を押した。
「痛いよ。離せ」
「わっ! ごめん!」
聖治は慌てて手を離す。
「でもありがと。嬉しい」
私は聖治に向かって微笑んだ。
聖治は照れて目をそらしたけど。
「ほら行くよ」
私は聖治の制服の裾を掴んで引っ張った。
痛いと叫ぶ聖治を無視して。
私達2組の教室は最上階の、4階にあった。
4階って疲れる。
エレベーターをつけてほしいものだ。
それに比べて聖治は息切れもせず、ぴんぴんしていた。
流石、運動しているだけある。