この手、あの手。


「実乃梨!」

体育館を出ようとしている私を、聖治は呼び止めて近づいてきた。


「実乃梨、用事あって来たんじゃないのか?」

「いや……、小松さんに言われて来ただけだから」

後ろに隠しているタオルを握った。

本当はタオル、渡したかった。


「正直に言えよ? 俺には実乃梨のことなんでも分かるんだからな!」

聖治は頭に手を乗せてきた。


「タオルだろ?」

「へっ!?」

なんで分かるの!?


「練習してる時に実乃梨が入ってくるの見えて……。タオル持ってたから」

私が入ってきたの、知ってたんだ……。

練習に集中してるかと思った。


「泉谷さんにタオル貰ったからいらないでしょ」

「……何で? 何人から貰っても気持ちだけで嬉しいよ。それに、交代で使えば良いし」


聖治は優しすぎる……。


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