とても微かな愛の言葉を。

「……むこう、いつ行っちゃうんだっけ」

「4月1日だよー」

「そっかぁー」


キィキィ。

揺れる影、ふたりぶん。


途切れることなく、君と話す。


まるで、いままでの、これからの、逢えない時を埋めるように。


寒い。


ブランコとブランコの間は、20センチ。


この距離が埋めることが出来るなら、もう、とっくの昔に埋めている。


手を伸ばせば、届きそうなのにね。


寒い。


「さぁ、そろそろ日も沈んで来たし、お家戻りますよ」


ひょい、と彼がブランコから立ち上がった。

空が、オレンジから濃紺に飲み込まれていく。

三日月が、意地悪に笑っていた。


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