とても微かな愛の言葉を。

「んー…、ちょっと寒くなって来たしねぇ」


渋々、私も立ち上がる。

長袖を下に着たワンピースに、ストールを羽織っただけだから、やっぱりまだ、それだけだと寒い。


「うん、そんな薄着じゃ寒いと思って」


笑う彼は、今日もどこまでも紳士。


彼の自転車を置いた公園の隅っこまで二人で歩く。



「ほれ、これ着てなさい」


ばさり、と私の頭に何かが掛けられた。

ちょっと重い。

彼の香りに包まれる。


どうやら、彼が、着ていたコートを私の頭に掛けたらしい。


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