とても微かな愛の言葉を。
「……コート、いいの?」
コートの下から彼を覗く。
「寒いでしょ?」
笑う彼。
貴方だって、コート脱いだらシャツ一枚じゃないですか。
「…ん、ありがとう」
そう言って、彼のコートを着る。
彼にピッタリなコートは、私にはぶかぶか。
くやしい、けど、あったかいね。
「あ、コートのポケットに自転車の鍵入ってるから出してー」
「うん」
彼に言われてポケットを探ろうとするも、袖からなかなか手が出ない。
「うわ、そんなにブカブカなのな」
何故か楽しそうに笑う彼。
「ブカブカじゃ、ないっ!」
なんとか鍵を出して彼に渡す。
彼はまた笑った。
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