恋愛ビギナー
「もう1年くらい好きなんだけど」
この際、氷藤くんの恋のキューピッドになってやろうか。
わたし失恋しちゃってるわけだし。
「氷藤くんって、案外一途なんだね」
「案外、なんて心外だなー」
「わたしもね、1年前くらいから好きなんだー」
わたしも一途だ、と無理に笑ってみせる。
正直、氷藤くんの恋愛について聞くのは辛い。
わたしはちゃんと話せているだろうか。
笑えているだろうか。
「無駄に絡んでるのに、全然気づかなくて」
わたしを真っ直ぐ見て話す氷藤くん。
自分に言われてるんだ、と錯覚してしまいそう。
そんなことですら、わたしの心臓は音を立てる。
わたしは氷藤くんを応援するんだから。
静まれ、心臓。