: 過去
「そうですか!それなら、今度行きましょうよ!」



「えっ…」



碧の誘いを聞いた山南は、少し視線を落とす


「皆さんと行ってみたいんです!」



「皆と…ね」



「はいっ」



満面の笑みである碧には、山南の寂しげな表情がわからなかった



このとき



池田屋事件での活躍を祝う宴



どうして山南が参加しなかったのか



それを知ったのは後になってからだった



彼はこのとき、腕にも心にも傷を負っていて…

***
数ヵ月前


土方と山南は大阪出張した



だが、その出張の際



昼食を摂っていた彼らの店に浪士がやって来て



そいつらは暴れ、刀を構える大騒動になった



その狭い店内で斬り合いになり、山南の不注意により



彼は腕を負傷した……


一命はとりとめたものの


もう、腕が動くことはなかった


武士として…


新撰組の総長として…


彼には絶望しか残らなかった

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