: 過去
***
今回は土方が折れる、ということで



豊玉発句集の観覧が許された



本人はまだ納得いかないようで…



そっぽを向いたまま黙りこんでしまった



そんな彼とは正反対に、



沖田は大声で俳句を読んでいる



「梅の花 一輪咲いても 梅は梅~! 鴬(うぐいす)や はたきの音も ついやめる」



読むたび、彼は大笑いだ



しかし次の句で、彼の表情は一変した



「しれば迷い しなければ迷わぬ 恋の道…」


――!



碧も何かを感じたように、背筋を伸ばす



――土方さんのこの句…何で私なんかが反応してんだろ。



戸惑い、油汗を浮かべた碧は土方に聞いた



「こ、この句は…「土方さんらしいですね、この句」



それだけ言うと、用事を思いだしたと沖田が部屋から出ていった



なんだかぎこちない雰囲気…



碧は俯くと、土方の笑い声が聞こえてきた



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