始末屋 妖幻堂
「いや、佐吉自体は、そんな力ないよ。破落戸にもならないような、小者さね。ただ、付き合ってる奴らには、そういうヤバい奴がいたのを何度か見たよ」

「そいつぁ・・・・・・」

 何となく見えてきた。
 佐吉が付き合っていた博徒というのは、伯狸楼繋がりの何者かではないのか。
 佐吉は小菊を逢い引きの場所に呼び出し、伯狸楼の者に売り飛ばしたということだろうか。

「なぁお冴さん。その博徒って、どこの誰だかはわからねぇか?」

「ええ? う~ん、そんなん、わからないよ。ただ、この辺りの者じゃないのは確かだね。ま、こんな山間の村に、ご大層なヤクザ者もいないけどさ」

 う~む、と千之助も頭を抱える。
 確かに、このような村娘に、都の亡八のことなどわからないだろう。

「佐吉って、博徒と知り合いってことは、賭博で借金とか作ってたんかな」

「かもね。とにかく、ろくでもない奴なんだよ、あいつは」

 もしかして小菊は、佐吉の作った借金のかたに売り飛ばされたのだろうか。

 そこまで考えて、千之助は、あることに思い至った。
 村からいなくなった者らは、もしかして皆、そのようにしてどこぞに売り払われたのではないか。
 佐吉がこの村の窓口だったのかもしれない。
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