始末屋 妖幻堂
「お冴さん。あんたの家からいなくなった奴らって、その佐吉と何か付き合いがあったとか、そんなこたぁねぇか?」

 いよいよ核心に迫ったような気がして、千之助は冴の肩を掴んで尋ねた。

「・・・・・・どうかなぁ。つーか、村の娘はそれなりに、あいつとは顔見知りだろうよ。さっきも言ったろ、佐吉は誰彼構わず手ぇ出すような輩だ。面が良くて口が上手いから、そうさね、あいつのことをあんま知らない奴には、人気があったよ。あ、それこそうちの女中なんか、そうだね」

「そうか。お冴さんの家の女中は、外からの人間が多いんだったな。打って付けじゃねぇか」

「打って付け?」

「佐吉は、都の博徒にこの村の娘を売ってたんじゃねぇかと思うんだ」

 千之助の言葉に、冴は『げっ』という顔をした。
 が、ちょっと考えただけで、納得したように頷く。

「そう・・・・・・かもしれない。そう考えれば、村から女中らがいなくなったのも、説明が付くもの。でも記憶は? いくら帰る家がない子でも、一応お父は、暇を出す前には預かり先とかを決めてあげてたよ?」

「その預かり先に、博徒の息がかかってたのかもしれねぇ。記憶に関しては・・・・・・まだよくわからねぇが」

 そう言って、千之助は辺りを見回した。
 佐吉の家だという掘っ立て小屋は、随分他の家よりみすぼらしいが、一応村の内部である。
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