始末屋 妖幻堂
「その、外から移り住んできた奴らが集まってるのは、どの辺りだい?」

「え、な、何で・・・・・・」

「病で家に帰ったっていう奴を訪ねるんだ。そいつらは、家があるんだろ?」

「そうだけど、でも無事かどうかまでは、わからないよ」

 歩き出す千之助を追いかけながら、冴が言う。

「皆、ぎりぎりまで働きたがるもんだからさ。こっちも、帰っても暮らしていけないのなら、できるだけ残してあげたいだろ。うちに働きに来てた子らは、言ってみれば、その家の稼ぎ頭なわけだし。その子が帰されたら、一家が飢え死にするかもなんだ。だから、いざ帰るとなったときには、かなりやつれてたんだよね」

 病の者を療養させてやるだけの余裕は、さすがに冴の家でもない。
 本人の希望通り、ぎりぎりまで働かせてやるだけでも良い待遇なのだ。
 一旦帰っても、良くなればまた雇ってやることだってできる。

「でも誰も、帰ってこなかった。村でも見ることもなくてさ。村では見なくても、山菜採りで会うことがあっても良いのに」

 だから皆、亡くなったのではないかと言うのだ。
 冴も気になっていたらしく、やがて先に立って歩き出した。

「あそこだよ」

 しばらく歩いて村から外れた頃、冴が前方を指差した。
 切り立った岩にへばりつくように、五軒ほどの小屋が見える。
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