始末屋 妖幻堂
「お、お里さん・・・・・・。あんたぁ、旦那のご内儀じゃないかえ。おんなじ屋敷内で、他の男に手ぇ出すのぁ良くねぇだろ」

 珍しく、千之助が狼狽えたように言う。
 だが里は、赤い唇を妖艶に曲げた。

「あら・・・・・・。お若いのに、お堅いかたなのね。わたくしが、あんなおじいさんで満足していると思うの?」

 少しだけ、身体を千之助のほうに乗り出す。
 冴のように、しなだれかかったりはしないが、掴んだ千之助の手は離さず、相変わらず己の胸を触らせている。

 千之助の手に余るほどの、柔らかい乳房だ。
 普通の男なら、耐えられなくなるだろう。

「若い男が来ることなんて、滅多にないもの。・・・・・・可哀相だと思うでしょ?」

 潤んだ瞳で見つめられ、千之助は軽く目眩を覚えた。
 開いた片手を里の腰に回し、千之助は無意識に彼女を抱き寄せる。
 里はそこで初めて、千之助の背に、ゆっくりと両手を回した。

「ふふ・・・・・・。私を知れば、冴など相手にできなくなりますよ」

 仰け反った里の首筋に顔を埋めながら、千之助は甘い香りに酔いしれた。

---駄目だ・・・・・・---

 果たしてそれは、里の誘いへの拒否の言葉か、落ちそうな自分への、諦めの言葉か。
 はだけた胸に千之助の頭を抱え込み、里は愉悦の表情で布団に倒れ込んだ。
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