始末屋 妖幻堂
---木乃伊(ミイラ)のようだな。でも妙だ---

 ただ放置しただけで、このように干涸らびるなどあり得ない。
 まずは腐るはずだ。

 それに。

 千之助は、老人の胸を見た。
 匕首が突き刺さり、黒く変色した血がこびりついている。

 まるで殺された後、急速に乾燥したようだ。
 自然に木乃伊になったとは思えない。

---そういや、外れの集落の婆さんも、冴の家から帰ってきた爺さんは痩せてたって言ってたな---

 もしかしてそれは、病のせいではないのではないか。

 しばらく考えていた千之助だが、とりあえず戸を閉めると、板の間に上がり込んだ。
 中央に屈み込み、囲炉裏の状態を確かめると、残っていた薪を集め、ぱちんと指を鳴らす。
 小さな火が、囲炉裏に入る。

 千之助はそこに、腰に結わえていた袋から出した粉を投げ入れた。
 途端にぶわっと煙が起こり、家中を満たす。
 煙なのに、不思議と煙たくはない。

 やがて煙に、何人かの人影が映し出された。
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