始末屋 妖幻堂
 初めは三人だった影に、いきなり四、五人の影が乱入し、もみ合いになる。
 そのうち一つの影が家を飛び出すように消え、一つの影にその他の影が群がる。

 千之助はその様子を横目で見つつ、それよりも気になった、元々の三つの影のうち、端で微動だにしない一つの影を見つめた。

 群がられている影が倒れると、他の影はこれまた家から飛び出していく。
 そこで、煙はふっと消えた。

 ふ、と千之助は息をついた。
 気になっていた一つの影は、終始微動だにせず、その場にあった。
 千之助の視線が、現実の死体に注がれる。
 老人ではなく、青年のほう。

---多分、あの影はこいつだな・・・・・・---

 もみ合いで殺されたのが、老人のほうだろう。
 となると、初めに家から飛び出したのが佐吉か。

 千之助は青年の死体を覗き込んだ。
 老人の死因はわかったが、青年の死因は疑問が残る。
 諍いに参加していないからだ。

 千之助は、改めて若いほうの死体を見た。
 乱闘があったときには、すでにこちらは死亡していたのだろうか。

---反魂香を使うのは、気が進まねぇ---

 目の前にある死体から、出来るだけの情報を得る努力をしつつ、千之助は先の映像を思い返した。
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