始末屋 妖幻堂
「後で芙蓉(ふよう)のところに、水を汲んで持って行ってやっておくれ」
「わかりました」
ぺこり、と頭を下げると、おさんは満足そうに頷いて去っていった。
呶々女はその後ろ姿をじっと見つめる。
やはり、伯狸楼に自分が来たのは正解だった。
おさん狐は妖怪である。
妖怪の中でも、妖狐は結構な力だ。
妖(あやかし)の気配ぐらい、簡単に見破れよう。
が、呶々女のことはばれていない。
牙呪丸が登楼すれば一発でばれたろうが、呶々女は妖怪ではないのだ。
---牙呪丸は、良い子にしてるかなぁ---
甘味好きの片割れを思いつつ、呶々女は持っていた雑巾を傍の桶に放り込むと、井戸に向かった。
雑巾を干し、新たな桶に水を汲んで、おさんに言われた芙蓉の部屋に行く。
芙蓉は裏要員だ。
裏要員の遊女は、一つの部屋に集められている。
位は皆そう高くなく、専属の禿もいない。
おそらく、変に他の遊女との接点を持って、詳しい裏事情が漏れるのを防ぐためだ。
呶々女がこの裏要員の遊女の部屋に入るのを許されたのは、ひとえに呶々女の働きっぷり故だろう。
裏に関することには、なかなか触れさせてくれないのだ。
「わかりました」
ぺこり、と頭を下げると、おさんは満足そうに頷いて去っていった。
呶々女はその後ろ姿をじっと見つめる。
やはり、伯狸楼に自分が来たのは正解だった。
おさん狐は妖怪である。
妖怪の中でも、妖狐は結構な力だ。
妖(あやかし)の気配ぐらい、簡単に見破れよう。
が、呶々女のことはばれていない。
牙呪丸が登楼すれば一発でばれたろうが、呶々女は妖怪ではないのだ。
---牙呪丸は、良い子にしてるかなぁ---
甘味好きの片割れを思いつつ、呶々女は持っていた雑巾を傍の桶に放り込むと、井戸に向かった。
雑巾を干し、新たな桶に水を汲んで、おさんに言われた芙蓉の部屋に行く。
芙蓉は裏要員だ。
裏要員の遊女は、一つの部屋に集められている。
位は皆そう高くなく、専属の禿もいない。
おそらく、変に他の遊女との接点を持って、詳しい裏事情が漏れるのを防ぐためだ。
呶々女がこの裏要員の遊女の部屋に入るのを許されたのは、ひとえに呶々女の働きっぷり故だろう。
裏に関することには、なかなか触れさせてくれないのだ。