始末屋 妖幻堂
「ああ・・・・・・。山吹ちゃんかい」

 辛そうに、芙蓉が呟いた。

「全くあの客、回を重ねるごとにきつくなる。夕べは、ぶっとい荒縄で、力任せに打つんだよ・・・・・・」

「・・・・・・冷やします」

 持ってきた手拭いを水に浸し、呶々女はそっと芙蓉の身体に当てた。
 瞬間、芙蓉の顔が苦痛に歪む。

---こういう姐さんの表情が良いのかな。・・・・・・わかんないな。今度旦那に聞いてみよう---

 千之助にとっては、迷惑な話である。
 男という括りで、思考回路が同じと思われているようだ。

 同じ男でも、そこに牙呪丸が入らないのは、彼はあくまで蛇だからか。
 千之助だって、純粋な人間とは限らないのだが。

「痛みますか? お薬が必要かしら・・・・・・」

 一通り芙蓉の身体を冷やしながら、呶々女は呟いた。

「大丈夫だよ・・・・・・。冷やしておけば、そのうち治るさ」

 ふ、と息をつき、芙蓉は呶々女から手拭いを受け取った。
 それを己の頬に当てる。
< 167 / 475 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop