始末屋 妖幻堂
「裏は、あちきらにとっては拷問部屋のようなもんさ。女を痛めつけないと快楽を得られないような奴らが、好き放題する地獄さね」

「・・・・・・ヒトにも、そんな奴がいるんですねぇ」

 呶々女の知るモノは、ヒトでないモノが多いので、そういう妙なことを好むモノも少なくない。
 現に牙呪丸だって、『絞め殺し』の本領を発揮するときは楽しそうだ。
 それが遊女言うところの『快楽』に当たるかはわからないが。

---やっぱり旦那に聞いてみよう。ヒトってそんなもんなのかな---

 自分を作った千之助を『ヒト』だと思っているわけではないのだが、呶々女の知る『ヒトでないモノ』よりは、よほどヒトらしい。
 知識も豊富だろうから、呶々女の疑問にぐらい、答えてくれるだろう。

「でも、その逃げ出した子ってのは、勝手に逃げ出したんでしょ? そりゃ、折檻されてもしょうがないんじゃないですか?」

 呶々女の言葉に、遊女らは暗い顔になる。

「そうだね・・・・・・。普通はそうだ。けどね、人間、耐えられることと耐えられないことがある。あちきらは、こんな傷だらけにされても、所詮は単なる怪我だもの。一時苦痛に耐えれば、そのうちすっかり元通り。だけどね、心についた傷は、そう簡単には治らないよ」
< 170 / 475 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop