始末屋 妖幻堂
「好きでもない男に抱かれるのは、皆同じだ。初めての水揚げだって、それこそそういう初穂摘みの好きなお大尽が相手だから、大抵の遊女は、どこぞの爺が初めての相手だよ。けど、いくら爺でも、相手は人間だ。しかも慣れてるから、好きでもない爺でも、そんなことで傷つく奴は、いやしないよ。廓に来た以上、男に抱かれるのは仕事だもの。でも、それはあくまで、人間が相手の場合の話だろ」
「・・・・・・獣相手だなんて、普通の奴は耐えられないよ」
しん、と沈黙が落ちる。
皆、小菊には同情しているらしい。
「その逃げ出した子は、獣を相手にさせられてたってことですか」
呶々女は芙蓉から受け取った手拭いを水につけた。
裏の遊女が皆小菊に同情的ならば、協力を仰げるかもしれない。
「いや、まだあの子は客を取ってなかった。なまじ見目が良かったもんだから、太夫ばりの所作を身につけさせた上で、獣の相手をさせようって腹だったのさ。立派な太夫が、獣に組み敷かれるっていう出し物を、おかしそうに遣り手や亡八が話してたもの。ぞっとしたね」
「最近はさぁ、お上の目も、ちょっと厳しくなってきたみたいで、裏の客も減ってきたから、店の者はやっきになってるのさ。表だけじゃ、この店なんざ、やっていけないんだよ」
ふむふむ、と呶々女は懸命に遊女の話を頭に刻む。
なかなか重要な情報だ。
できるだけ細かく、千之助に伝えなければならない。
「・・・・・・獣相手だなんて、普通の奴は耐えられないよ」
しん、と沈黙が落ちる。
皆、小菊には同情しているらしい。
「その逃げ出した子は、獣を相手にさせられてたってことですか」
呶々女は芙蓉から受け取った手拭いを水につけた。
裏の遊女が皆小菊に同情的ならば、協力を仰げるかもしれない。
「いや、まだあの子は客を取ってなかった。なまじ見目が良かったもんだから、太夫ばりの所作を身につけさせた上で、獣の相手をさせようって腹だったのさ。立派な太夫が、獣に組み敷かれるっていう出し物を、おかしそうに遣り手や亡八が話してたもの。ぞっとしたね」
「最近はさぁ、お上の目も、ちょっと厳しくなってきたみたいで、裏の客も減ってきたから、店の者はやっきになってるのさ。表だけじゃ、この店なんざ、やっていけないんだよ」
ふむふむ、と呶々女は懸命に遊女の話を頭に刻む。
なかなか重要な情報だ。
できるだけ細かく、千之助に伝えなければならない。