始末屋 妖幻堂
「でも、そんな出し物したら、それこそお上の目があるじゃないですか。出し物ってことは、一人のお客のためにするんじゃないですよね? 皆の前で、そういうことをさすんでしょ?」

 言っているうちに、腹が立ってくる。
 呶々女は今の自分の見かけ年齢も忘れていきり立った。

「大衆の前で、そういう行為をさせられるのだけでも、この上ない恥辱なのに、相手が獣だなんて・・・・・・!」

「・・・・・・あんたぁ、幼いのに睦言に詳しいねぇ・・・・・・」

 ぷんすかと怒る呶々女を、遊女はぽかんと見つめて言った。

「ま、嫌でもここにいりゃ詳しくなるわな。廓に入ったからには、それなりに詳しいほうが、身のためだもの」

 特に不審に思うことなく、遊女らはまたため息をついた。

「そう。だから、そういう目に遭うぐらいなら、殺されるかもしれないけども、逃げられるもんなら逃げるだろうさ。いや、むしろ捕まって殺されたっていいんだ。そんな目に遭うぐらいならね」

「ただでさえあの子、売られてきてすぐに、遣り手に傷物にされてるんだ。それで散々表の遊女にいびられてきたしね。そんな奴らを見返すための出世の道も、端(はな)から閉ざされてる。あの子の心の傷は、生半可なものじゃないだろう」

 おや、と呶々女は、遊女らを見た。
 裏の遊女は、仲間意識が強いようだ。
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